(番外)歌舞伎座評の一部訂正について ─上村以和於

13日付け日経新聞夕刊に掲載の「歌舞伎座納涼歌舞伎評」の内、第三部の『お国と五平』についての文中、「原作にないセリフを補綴して」としたのは筆者の早計による誤りでした。面目ありませんが謝ります。そこで『お国と五平』の部分を、つぎのように訂正させていただきたいと思います。関係者各位と読者の皆様にお詫び申し上げます。

    

第三部は谷崎潤一郎作『お国と五平』。大正期に書かれた異色作が、ますます今日的な真実味を持つようになった。三津五郎の友之丞のセリフの説得力。扇雀のお国、勘太郎の五平もよくやっているが、幕切れに二人を抱擁させた演出は解釈が一面的過ぎて異論も出よう。あれでは友之丞がまるで結びの神のようになってしまう。

   

(ついでに)

つい先日、神保町シアターで成瀬巳喜男監督の昭和二十七年作東宝映画『お国と五平』を見ました。大谷友右衛門時代の雀右衛門が五平、木暮実千代がお国、山村聡の友之丞という配役で、前にも見ていますが、改めて再見して、いろいろ興味深い点を発見しました。そこではラストが、友之丞を斬った五平が、内心の虚を突かれたかのように駆けるように立ち去ろうとするのが印象的でした。

さまざまな解釈を可能にするのがこの作品の面白いところで、観客にひとつの答えだけを見せるのは、この作の場合、少なくとも賢明な演出とは言えないでしょう。

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