随談第671回 最終回の弁

出抜けの申し様で恐縮ですが、このブログもこの回を以って最終回とさせていただきたく、「口上」というほど改まったものではなく弁明じみた駄文を以ってご勘弁願いたいと存じます。

過日ふと気が付いたことがありまして、というのは、このところ書くもの書くもの、ほとんどが過去に書いたことの二番煎じ三番煎じであるということです。尤も、それは元々、ある程度は承知の上で、年寄りが永きにわたって書いていれば時にとってはそれも愛嬌の内、同じような話題話柄が少しずつ変奏されながら繰り返される変奏曲のような趣きもあろうか、などという自惚れもないではなかったのでしたが、何ごとにも程というものがありましょう。物忘れではなく、これを書こうと思う関心の幅が狭くなっているということかも知れません。あれこれ思いつく話柄としてなら、実は必ずしも少なくはないのです。

いつ頃からそうなったのだったか、このところ月毎に一度というペースがお定まりになってしまっていますが、以前は、思い立つたびに書いていたものでした。20年足らずの間に通算671回という回数を重ねたのもそのためですが、やはりそれだけ意欲があったことの表われだったような気もします。永きにわたって読み続けて下さった方もある由で、有難い限りですが、そうした方々にまで愛想を尽かされない内にけじめをつけるのがせめてもの嗜みというものでありましょう。人生とは、つづまるところ、記憶の裡に残るものの謂いとも言えましょうが、それにお付き合いいただくのにも亦、頃合いというものがありましょう。

という次第であります。劇評その他の仕事にはまだ幕を引くわけではありませんので、そちらにもお付き合いを続けていただけるなら感謝この上はありません。かえすがえすも、永きにわたってのご愛読に心より御礼申し上げます。

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もう一つ、申し添えなければならないことがあります。これも以前に書いたことではありますが、パソコンを操るのも原稿を書くかメールのやり取りしかできない私のようなものがこのようなブログを、それも「公式サイト」と銘打って持つことなど技術的にも不可能であるばかりか、そもそも思い立つことすらなかったでありましょう。すべては、私にそれを提案し勧めてくれた上、実際の運営一切を引き受けてくれた吉田亜矢さんの存在があったればこそのことでした。また私にとっては初めての電子書籍として『眼中の歌舞伎役者たち』を上梓することができたのもすべて彼女のお陰でした。文字通り、私の眼中にいまも鮮やかに生きている思い出深い役者たちへのオマージュで、これを世に出すことで思い残すことの大半が解消されたような気がしています。

ここに改めてこうした実情を皆様に披歴した上で、この場を借りて彼女に多大なる感謝の意を表し御礼を申し上げる次第です。

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改めて、20年近い永きに渉ってのご愛読に感謝いたします。

       2023年晩秋 上村以和於

“随談第671回 最終回の弁” への3件の返信

  1. 671回。スカイツリーの高さも越えてしまいましたね。凄いことです。閃きとか何かが降りてくるとかいう歌うたいの人の中にも同じような曲とか詞あるものです。でもファンというのはそれも含めてファンなんです✨。沢山のファンと支えてくださる皆様に愛されて現役のうちに華々しく公式サイトの幕をおろすことに、私は拍手喝采です。スタンドオベーションです????。これからも歌舞いて機会があれば広めて好きを全うしてくださいね。

  2. 今月の日経の評拝読。「吉との仁の違い、様式からたち現れる人物像が菊之助の仁と相俟って」とは、見事!劇評も劇評。

    いづれブログ復活をと密かに期待しております。

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