随談第154回 スポーツ随談(その3)流出か交流か

シーズンオフになって松坂の大リーグ移籍をきっかけに、また流出問題が問題になっている。たしかにこれは、議論百出して当然であり、もっともっと議論すべき問題だ。

じつはこの問題についても、このブログを始めて間もない去年四月にも書いたことがある。その時は、黒船が来て開国してしまった以上、行きたいという者を止めるわけにはいかないだろうということを言ったのだった。いちばん偉いのは、最初に「海外渡航」を決行した野茂という、ジョン万次郎と吉田松陰を合わせたような選手であり、イチローだろうが松井だろうが新庄だろうが、みな野茂の爪の垢を煎じて飲むべきだとも書いた。まして、今ごろになって「洋行」をしようという連中などは・・・。

ロッテのバレンタイン監督が選手流出は日本野球の恥だと言ったそうである。FAを行使して行くのはともかくポスティング制度はやめるべきだという意見もある。どちらももっとも至極だが、そう言ったからといって、なるほど、ではやめますと言う選手はいないだろう。

松坂は10歳のときからの夢だったという。イチローでも松井でもたぶん同じだろう。誰かが、それなら何故高校を卒業した時点で行かなかったのだと言っていたが、これもその通りには違いない。その点でだれよりも天晴れなのは大家投手だろう。イチローも松井も松坂も、その意味では「いいとこ取り」だと言われても仕方がない。しかしこれも、それではやめますとは誰も言わないだろう。

要するに、アメリカこそが本場だという意識を、選手も関係者も一般ファンも、誰もが持っている限り、止むことはないのだ。日本のプロ野球は見ないがメジャーの中継は必ず見る、などと得意気に言う鹿鳴館のハイカラ紳士みたいな種族も発生してすでに久しい。「舶来崇拝」は日本有史以来の気質であって、それ自体が日本文化の一大特性みたいなものであって、日本人のDNAにすり込まれてしまっているのだ。

結局、考えるべきはふたつしかないだろう。

ひとつは、WBAやアジア選手権のような機会をもっと盛んにして、日本野球が本当にアメリカ・メジャーと対等なのだという実績をもっともっと作ることだ。そのためには、WBAで一回ぐらい優勝したからといって(韓国には負け越し、メキシコがアメリカに勝ってくれたお陰のたなぼた優勝だったことも忘れてはいけないよね)、この間のサッカーのワールドカップのときのような、かつての軍部の大本営発表みたいな野郎自大にならないだけの賢さを、国民的規模で養うようにしなければ駄目だろう。そうなった暁には、「流出」ではなく、「交流」が可能になるはずだ。

もうひとつは、企業としての日本の野球をもっとよくしなきゃ。Jリーグは、後発企業としての地の利を生かして、先発企業であるプロ野球の欠点をじつによく研究して出発したから、テレビの前でステテコ姿で缶ビールを片手にオダを上げている亭主や親父にうんざりしていた女性や若者を、一挙にさらっていったのだ。いまのところ、その意味で見るべき有効打は、日ハムの札幌移転ぐらいなものだろう。

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